京都第一の強みと実績
「名ばかり管理職」の残業代500万円を6か月で回収
- 担当弁護士
- 高木 野衣
とある会社の一部署で主任を務めていた女性。日々、長時間労働に従事していましたが、「管理職だから」と残業代を1円も支払ってもらえずに疲弊し、退職を決意して当事務所へ相談に来られました。
労働基準法は、1日8時間、週40時間を超える労働に対しては、割増賃金を支払わなければならないとする一方(同法32条、37条)、この規定は「監督若しくは管理の地位にある者」には適用されないとしています(同法41条2号)。この規定を根拠に、会社の職制上の「管理職」には残業代を支払わなくてよいのだと考えている使用者が多くいます。
しかし、労働基準法がこのような規定を設けているのは、労働時間等に関する規制の枠を超えて使用者と一体的に活動することが要請され、勤務態様も規制に馴染まないような労働者に対応するためです。
したがって、労働基準法上の「管理監督者」に該当するのは、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」であり、会社内の役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実質によって判断するとされています。
具体的には、(1)労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容や責任、権限を有していること、(2)現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないものであること、(3)その地位にふさわしい待遇がなされていること、以上の点を具体的に検討し、判断されます。
たとえば、(1)の観点では、他従業員の採用や解雇、人事考課、労働時間管理についての責任や権限を有しているか否か、(2)の観点では、タイムカードで時間管理をされているか否かや、遅刻や早退によるサンクションの有無、他従業員との勤務態様との違いの有無等、(3)の観点では、職務の重要性から、地位や賃金その他の待遇において、他従業員に比して相応の待遇が与えられているか否か等を検討のうえ、判断されることになります。
ですから、過去の裁判例では、肩書だけを見れば「管理職」に該当しそうな者、たとえば、店舗の店長やマネージャー、会社の営業課長や人事課長、工場の工場長、銀行の支店長代理等であっても、労働基準法上の「管理監督者」ではないとして、使用者に残業代の支払いを命じた例が多々存在します。
さて、当事務所に相談に来られた女性のお話を聞いてみると、(1)人事や給与に関する決定権限はなく、(2)また、タイムカードで時間管理されており、課員と全く同じ業務についていました。(3)さらに、給与も残業代の支給を受ける課員らよりも低額でした。
まさに「名ばかり管理職」というべき状態でしたので、会社に内容証明郵便を送付してタイムカードの写しを取り寄せ、正確な残業代を算出のうえ、提訴。結果、請求金額の8割強での早期和解となりました。
「管理職だから」と残業代の支給を受けていない方。もしかしたら、あなたは「名ばかり管理職」かもしれません。一度、当事務所へご相談ください。