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とあるエリアマネージャーの残業代請求
- 担当弁護士
- 谷 文彰
1 エリアマネージャーだったAさんからのご相談
とあるところでエリアマネージャーとして働いていたAさん。当事務所のホームページをご覧になり,ご相談に来られました。
さっそく残業代の額を計算して内容証明郵便を送り,事件がスタートします。
2 会社の反論はまたしても「管理監督者」
会社側は一定の未払残業代があることは認めましたが,「〇年〇月からはエリアマネージャーであり,管理監督者に該当するので残業代は発生しない」と主張しました。①人員の採用や異動について実質的な権限があった,②従業員のシフトを管理していた,③エリアマネージャーとして会社の重要な会議に参加していた,というのです。
本当にそうでしょうか。
3 厚生労働省パンフ「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」
こうした主張は実はよくあります。けれど,厚生労働省の「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」というパンフレットをご覧いただければ,このような会社側の主張が安易には通らないことがご理解いただけるのではないでしょうか。
例えば,①の点については「「課長」「リーダー」といった肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝達するに過ぎないような者は、管理監督者とは言えません。」とされています。Aさんも採用などについては稟議などの決裁を求めなければならない立場でしたので,「実質的な権限があった」とはとてもいえません。
②についてはそもそもAさんの業務ではなかったのですが,上記パンフレットでは「店舗における勤務割表の作成又は所定時間外労働の命令を行う責任と権限が実質的にない場合」は管理監督者性を否定する要素として挙げられていますから,シフト表を作成している場合でも上司の決裁などが必要な場合は同様に否定する方向に働くでしょう。
③については,会社の意思決定を決めるような重要な会議(取締役会など)であることが必要ですが,Aさんの出席していた会議はそのようなものではありませんでした。
そのほか,上記パンフレットでは,「労働時間について厳格な管理をされているような場合は、管理監督者とは言えません。」とされておりタイムカードなどで管理されている場合は否定する方向になります(Aさんもそうでした)。業務の内容や賃金等の待遇についても,一般の従業員とは相当異なることが必要です(Aさんはそうではありませんでした)。
4 請求から3ヶ月で高額の合意を実現
こちらからは仕事の実態や法的な基準を丁寧に主張・立証し,管理監督者には該当しないことを明確にしました。
会社側もこちらの主張を受け入れざるを得ず,最終的にはほぼこちらの請求額にかなり近い額での和解解決となりました。
5 弁護士にご相談を
エリアマネージャーという肩書であっても実態をきちんと見れば「管理監督者」ではなく,残業代をもらえる立場であることが多いでしょう。そのような立場で残業代がもらえていない方,知識・経験・ノウハウのある当事務所にぜひご相談ください。