京都第一の強みと実績
「固定残業手当」という名称でも残業代の支払いがあったと認めず勝利和解に至った例
- 担当弁護士
- 谷 文彰
1 会社への不信感から残業代請求へ
Aさんは運転手として長年にわたって働いていましたが、労働条件や給料の内訳についてきちんとした説明がないことなどに不信感を募らせていきました。そうして最後には退職を決意し、あわせてそれまでの残業代の支払いを求めて当事務所に来られました。
2 工夫を重ねて固定残業代を無効に
本件の大きな特徴は、「固定残業手当」という名目で手当てが支給されており、しかも労働条件通知書にはその手当ては30時間分の割増賃金相当額であるとの記載があったことです。手当の性質についてこれだけはっきり記載があると、一般論としては、固定残業代として有効であるとの結論も十分考えられるところです。
そこで、別の角度から無効を主張することにしました。例えば、求人票にはそのような手当のことは一切触れられておらず単に「基本給〇円」とだけ記載されていたこと、労働時間の管理がきちんとなされておらず残業代支払いの前提となる労働時間の適正な把握がされていないこと、残業時間が30時間を超過した場合の差額の支払いがされていないこと、などです。さらに、固定残業代で設定された時間外労働時間と実際の時間外労働時間とが乖離していないかどうかを検討すべきとする最高裁判所平成30年7月19日判決に照らし、本件では両者の乖離が大きいことも指摘しました。
そうしたところ裁判所から固定残業代としては無効であるとの心証が示され、それを前提に相当額の解決金を得る形で和解することができました。
3 その固定残業代、無効化もしれません
正直なところ、「固定残業手当」との名目からして見通しは厳しいのではないかとの思いも当初は持っていましたが、粘り強く丁寧に主張・立証を行うことで勝利和解へとたどり着くことができました。
固定残業代の制度は本当にたくさんの会社で利用されていますが、法律上は無効と判断される可能性があります。ぜひご相談ください。